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後継者育成について

後継者育成について

5ee18c7a9a8406ee4a60472b5d6bdcd2_m_R多くの会社にとって後継者の問題は非常に頭の痛い問題です。社長の子供さんが継がれることが多いのですがそうでない場合もあります。会社を引き継ぐ場合、その後継者は多方面に様々な能力が要求され精神的にも肉体的にもその大変さは察するに余りあります。私はこれまで多くの後継者の成功事例や失敗事例を目にしてきたつもりですが、成功にも失敗にもそれぞれちゃんとした理由があり成功するべくして成功してきた事例、逆に失敗するべくして失敗した事例に直接間接に係ってきました。
私は公認会計士・税理士として主として財務分野の知識を後継者の方に持ってもらうよう様々な働きかけを行います。私が主催する研修会に出席してもらって会計や税務の最低限の知識習得もその一環ですが、型通りのセミナーでの知識習得だけではなかなか経営に応用が利かない場合が多いと考えます。そのためできるだけその後継者の方と一緒に食事をしたり会社や事務所で雑談をしたりしながらこれまでの経営の事例をお話ししてご自分の会社に応用できるように説明しようとしています。短期間に後継者育成のためのセミナーを聞いてもらうのではなく、5年10年という長い時間がかかりますがその後継者や会社の実情に合った話し合いを通じて後継者として何をなすべきかを考えてもらおうと思っているのです。どの分野にも言えることですが、後継者として成功する人に共通するのが“努力家である”ということと“この会社をなんとしても引き継ぐんだという強い信念の持ち主だ”ということだと私は考えています。努力家でもなく強い信念もない人は後継者にならない方がかえって幸せかもしれませんね。

失敗事例を一つだけご紹介します。その会社は昭和一桁生まれの先代社長が終戦後一代で大きくした建設会社です。辛酸を舐めた先代とは打って変わって二代目は見るからにシティボーイで小さいころから幸せを絵に描いたような人生を送り大学卒業と同時にお父さんの会社に入りすぐ取締役に(私は猛反対したのですが)就任しました。私はこの二代目さんにまず現場の苦労をわかってもらうためにセメントを捏ねることからやりなさいと言ったのですが、本人は企画だとか広報だとかのいわゆる綺麗な仕事をやりたがってそういういわゆる3Kの仕事はやりたがりませんでした。それなら「お父さんは建設に係るありとあらゆると言っても過言でないたくさんの資格を取得しているのであなたも勉強して建設関連の資格をできるだけ多くとりなさい。」とアドバイスしたのですが、それもあまりしませんでした。先代が死去されてからこの会社は10年もたたないうちに倒産しました。

どうすれば違った展開になっていた可能性があったのでしょうか。苦労した初代は自分の苦労を息子にさせたくないと考えるのは人情ですが、あえて同業種の他の会社に就職させて10年ほど他人の釜の飯を食べさせてから自分の会社に入社させて現場の一兵卒から始めさせるといいと思います。そして10年ほど自分の会社の総務経理部門も含めて全部の部門を体験させたうえで40歳を過ぎてから取締役にしても全く遅くはないと私は考えます。

こういったお話しを通じて後継者育成の一助になればと願っています。

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