会社買収・売却について
会社買収の相談を時々受けます。会社買収や売却の専門の仲介会社もたくさんあり、こういった会社のセミナーにも何度も出かけましたがおいしい成功事例をことさら強調するような気がして危うさを感じることもありました。
会社の買収は相手の株式を全部買い取って自分の傘下に収めるものですが、よほど慎重に考えないと往々にして「こんなはずではなかった!」ということにもなりかねません。
税務署に提出する決算書が必ずしも会社の全体像を表しているとは限らないのは言うまでもないことです。帳簿に計上されていない資産はともかくも簿外の(支払保証も含めた)負債が多額にあったのでは何のための会社買収かわからないどころかこちらの経営そのものを揺るがしかねない事態にもなりかねません。
これまで当事務所のお客さんから多くの会社買収の案件の相談がありましたが、実現に至ったのはほんの数件です。買収相手の会社の財務内容を徹底的に調査するのですがどうしても不安が拭いきれない箇所がある場合、基本的に“疑わしきは、やめる”という考えで買収を断念することが多いからです。確かに買収によって新たな販路開拓や技術が手に入るのはいいのですが、基本的に全従業員を当然に定年まで抱えねばならず買収時には予想もしなかった支払いが将来的に出る可能性がありリスクもかなり高いことを覚悟せねばなりません。
監査の世界でよく言われるのが資産については実在性(貸借対照表に計上されているものが本当にあるのか)と換金可能性(どの程度で換金できるのか)、負債については網羅性(すべての負債が貸借対照表に計上されているのか)が大切だということです。そのどれも確認することは容易ではありませんがとりわけ負債の網羅性は困難が伴います。特に買収先の経営者が意図的に不利な情報を隠そうとしている場合は尚更です。
ただ私のアドバイスはあくまで主として財務面からのものですから、経営的な面からみて多少不透明なところがあろうとそれを大きく上回る買収による効果が期待できそうであればもちろん反対はしません。