営業部だけがエラいのか
平成19年6月兵庫県神戸市にある戦没商船資料館を見学しました。商船とは輸送船のことです。華々しい海の戦いの末に沈没した軍艦は小説にも映画にも取り上げられることが多いですが、輸送船などの商船のほうが軍艦よりもはるかに被害が大きく民間人たる船員6万人余とともに大小2千数百隻が戦没(漁船や機帆船を含めれば何と7200隻!)しているにもかかわらずその最期を知っている人はほとんどいません。
敵艦隊撃滅を至上命題として輸送船を守るという発想のなかった日本海軍に対しアメリカ軍は徹底的にほとんど丸腰の日本輸送船団を思いのまま攻撃しました。全世界の海軍は自国の商船を護衛するために発達してきたにもかかわらず、日本海軍のみ日露戦争における日本海海戦(明治38年5月)で日本連合艦隊がロシアのバルチック艦隊を撃滅した成功体験からついに抜けきらなかったのです。
危険極まりない海へ文句も言わずに乗り出していった当時の船員たちの苦悩を思うと涙が止まりませんでした。戦後60数年言われ続けている海軍善玉、陸軍悪玉論には私は単純には与しません。海軍トップの判断の誤り(無能と言い換えてもいいです。)で如何に多くの日本人がむなしく南海に死んでいったことか。絶望悲嘆無念などどんな形容詞も表し尽せないような気がします。
当時の日本海軍には戦闘を直接戦う軍艦こそがエライのであって輸送船などの船は歯牙にもかけていなかったといったら言い過ぎでしょうか。戦争は総合的な国力で戦うものであってそのどの部分が欠けても戦闘能力に影響が出るのです。
会社経営も同じです。多くの会社は営業部が最も幅を利かせ、他の部課例えば経理部などを見下しているように感じられることがあります。口には出さずとも営業部の人たちは“俺たちが稼いでお前たちを喰わしているんだ。”という態度をあらわにすることが少なくありません。営業だけで会社が成り立っているのではありません。経理部も総務部も利益追求ということからは営業部と等しくその役割を担っているのです。経理部の努力で貸倒を回避した或いは法人税の課税を免れたなどは営業が契約を取って粗利益を上げたのと同じ効果ですし、経営の根幹にかかわる意思決定に関する資料を作成するのは経理部や総務部の仕事になることが多いと思われます。会社への貢献を近視眼的に見てはいけないということです。