会社立直しについて
これまで当事務所には、民事再生法申立や会社立直しの相談にお出でになる会社経営者が少なからずありました。ところがこういった会社の経営者の方々は、会計や税金に対する興味が薄く又知識もほとんどない場合が多かったように思います。会社立直しを相談された会社に初めてお伺いしたときに、社長に対し法人税等の申告書決算書類や総勘定元帳を見せて下さいと言って、すぐ出てきた例はあまりありません。あっちの引出しをあけ、こっちの棚を捜し右往左往してようやく書類の山の中から見つけるのです。しかも全く読むこともなく活用もしようとしていない如くでした。ひどいのは「そのような書類は数年分会計事務所に預けてあるので会社にはありませんね。」とさえ仰る社長もいました。法人税等の申告書・決算書を作成してもらうために少なからぬ決算料を会計事務所に支払い、毎月の記帳の成果物である総勘定元帳も記帳料という費用を支払っているはずなので決算書や総勘定元帳は金額的に見れば実はかなり高額な書類といえるものなのです。しかもそれらの書類には会社立直しのヒントがぎっしりと詰まっているにもかかわらず、これらを ほとんど読まない活用しないのは誠にもったいない限りとしか言いようがありません。
財務だけで会社は動きませんが、さりとて財務を無視しても会社は動かないのです。 流動資産と固定資産の違い、営業利益と経常利益の違いをご存知でしょうか。 税務調査で役員賞与や交際費・寄付金で法人税を課税されるのと、修繕費を否認されたり棚卸資産や売上の計上漏れで課税される場合の税務的な違いをご存知でしょうか。これらの違いは役員さん方が当然知っておくべき極めて大事な違いなのです。
役員の方々に決算や税金の申告書を書いて下さいとは言いませんが、最低限会社経営上必要な会計や税金の知識は必ず頭に入れておかねばなりません。私は営業のことはわかりませんが、財務面から見た利益率の高い商品の分析は出来ます。 同様に会社全体から見て冗費(無駄な経費のことです)の削減に関するアドバイスや会計の仕組みをより効率的に直すことも可能です。法人税をはじめとした様々な税金も会社経営にとってはコストの一部ですからこれを削減することは経営努力の一環であると考えます。会社立直しの第一歩は、営業一筋だった経営者の方々に会計や税務の知識を勉強して頂いてご自分の会社の財務的な問題点を正しく認識してもらうところから始まります。そのお手伝いを十分時間をかけて行おうと思っています。何が問題点なのかさえ正しく認識してもらえれば後は役員の方々と一緒に会社再生のための計画を策定しこれを実行するのはそう困難ではないと私は考えています。
後継者育成など多くの分野に共通ですが、問答集や参考書に書いてある事例が自社にピタリとあてはまってスイスイと会社立て直しが進むことはまずありません。百社の会社があれば百通りの事情があって教科書通りに行かないことは当たり前なので我々専門家と共に一緒に知恵を絞り汗をかかねばなりませんが、どんな苦労でも会社が倒産するよりはいいはずですね。
それからもう一つだけ強調したいことがあります。それは専門家と称する人たちは“会社としていわば使うべきものであって、会社が使われてはいけない”ということです。
“会社が使われる”ということは経営者の人たちが自分で考えず汗もかかずすべて専門家やコンサルタントの言いなりになるということです。これでは会社立て直しは進まないと私は考えていますので、一から十まで専門家にお任せではなく経営者自ら血も汗も流す厳しい覚悟が必要になります。