税金に対する私の考え方
当事務所のお客さんから「どうしたら会社が太るんですか?」とよく聞かれることがあります。“会社が太る”とは内部留保が積みあがるという意味だと思いますが、その場合 「どんどん法人税を納付してください。」と答えていつも怪訝な顔をされることが多いです。法人税等の税率は100%になる事はありません。法人も個人も全く税負担をすることなしに財産を手にすることは基本的にないと思うべきですが、利益に対しておおよそ30%前後と考えられる税率で法人税等を負担すれば残りの70%前後は会社の剰余金として内部留保になる(つまり会社が太ったことになる)のです。どんどん法人税を払えばその納付額の2倍以上の金額で会社の内部留保が増えるということです。
少なからぬ経営者の方は、まるで税金を支払わないことが経営の目的であるかのような感覚を持っているように見受けられますが、そうではありませんね。いかに使えるお金を増やすかに努力を傾注すべきであって、納税回避に汲々としているのでは安定した経営は望めないと言うべきです。具体例を挙げれば例えば、ある会社の税引前利益が1,000だったとします。このままでは300法人税等をとられてしまうから、要らざるものを急遽買ったり一括払いの保険に入ったりシャカリキになって1,000の経費を計上して利益をゼロにしました。税金もゼロになりましたが使えるお金もゼロになるのです。これでは経営者として失格ですね。(きちんとした節税策を講じた上で)正々堂々と300の法人税等を納付すれば残り700は剰余金として積み上がり使えるお金も増えることになります。こちらの方が正しい経営者の態度だと私は考えます。
法人税等の税率と個人の所得税等の税率は所得にもよりますが大きく異なります。会社のオーナー兼社長が大半を占める日本の会社の多くの場合、お金に色はない訳ですから法人税として納付するのも所得税として納付するのも同じことのような気がします。つまりそのオーナー社長にとって法人税等と所得税等とそして(遠い将来の)相続税も含めて最小になるような税金対策が必要だと私は考えています。つまり法人税等を200余計に納めても所得税等の負担が300軽くなるのであればその税金対策は実行すべきだと思いますし、場合によっては法人税等と所得税等合わせて今300負担が増えるけれども(近い将来の)相続税が600負担軽減になるということであれば大いに実行を検討すべきだと思います。税金対策は法人税だけとか相続税だけというような近視眼的に考えるのではなく関係するすべての税目を複合的にとらえて行われるべきものだと私は思いますし、すべてに当てはまる公式のようなものはないので個別の事情を斟酌して十二分にお客さんと相談の上、納得づくで様々な対策を進めようと考えています。