平成22年4月20日の日経新聞に“松竹、歌舞伎好調で増益”という見出しで「松竹は映像関連事業は不振だったが演劇事業が“歌舞伎座さよなら公演”が好調で収益を伸ばし、経常利益は前の期の2.7倍の19億円になった。」との記事が掲載されました。

サモアリナンと思いますね。“歌舞伎座さよなら公演”は何と平成21年1月から22年4月まで実に16ヶ月!も続けました。そしてきっと歌舞伎座の写真集がそのうち出るだろうと思っていたら案の定出ました。それも、さもなーい装丁で2,500円の値段!! → でもしっかり買いました。

さらに本来なら産業廃棄物になるはずだった歌舞伎座の屋根瓦にちょっとした時計を付加して“歌舞伎座瓦時計”と称して一個30,000円!!!で売り出しました。まったく商魂逞しい事この上ありませんね。 → これも買おうと申し込んだのですが、応募者多数で私は抽選に漏れました。

そして極め付きは、歌舞伎座公演最後の年になった平成22年のチケット料金です。平成21年12月までは昼の部16,000円(概ね4時間半ほどです。)と夜の部16,000円(これも4時間半ほどです。)の二部制ですから一日通しで観劇するとチケット代金は32,000円です。ところが平成22年1月になるやこれを20,000円にしました。(一日通しだと40,000円)一気に4,000円の値上げです。そして3月と4月は三部制にして一部(概ね3時間ほどです。)について15,000円のチケット料金にしたのです。つまりこの3月と4月は一日通しで見ると45,000円もチケット代金がかかることになります。ホントの最後ということで昨年12月までに比べて13,000円40%余りの値上げです。まったくアコギな商売だ! →  でも全部見ました!!ハイ。

私は東京駅や劇場、ホテルを移動する際タクシーを利用することが多いのですが、何万分の一の確率かたった一回だけ同じ運転手さんに乗り合わせたことがあります。その方は本業が「からくり人形師」なのだそうですが、からくり人形制作だけでは生活できないので空いた時間にタクシー運転手をしているとのことでした。しかし今となってはどっちが本業かわからないと嘆いていました。

その「からくり人形師」兼タクシー運転手さんはからくり人形制作には文化庁からわずかな補助金が出るが、その補助金をもらうために膨大な申請書を作成しなければならないのでその慣れない資料作成に疲れるし、また日本の伝統芸能のことをほとんど知らない文化庁のお役人から補助金を貰うせいで役所や役人に対してどうしても卑屈になってしまう自分が嫌だと言っていました。同じことは「文楽」にも言えて、江戸時代の大衆娯楽の王様だった「文楽」も平成の御世では補助金を貰ってやっと伝統の灯を守っている状況だそうで、いきおい金を出してくれる国に対しては弱い立場に知らず知らずになっているとのことです。あまり経営努力をしなくても安定して補助金が出るというのは魅力的に映るかもしれません。しかし金を出すところは口も出すし、無言の圧力というものも大いにあるでしょうから国への批判めいたことは自然に自粛することになったり、国の好む題材を演目に選んだりすることになりかねず、しだいに大衆の支持を失い国の全面的保護がなければやがて「文楽」の維持・継承が困難になっていくような気がしてなりません。(今の日本の農業も事情は同様かも・・・・)

その点、歌舞伎は白井松次郎と大谷竹次郎兄弟が明治35年に設立した松竹(“しょうちく”ではなく“まつたけ”と当時は発音したそうです。)合名会社がその経営を行うようになって100年余りになりますがその間、国などから補助金の類は一切なく全て自力で歌舞伎他の演劇を行ってきたのです。これは全世界でも大変珍しいことなのだそうで、国家による制約や干渉を受けることなく自由に興行できる日本の歌舞伎は世界の演劇人からうらやましがられています。

例えば平成14年2月、新橋演舞場で中村勘九郎(当時)主演の“喜劇地獄めぐり”というお芝居(だったと記憶しています。)の中で、ワイロ要求など悪いことばかりする県会議員に対して勘九郎がアドリブで「このヤローおめえは鈴木宗男か。」との台詞を投げつけるシーンがありました。平成14年ごろ外交に関して当時自民党の鈴木宗男衆議院議員が全国民からバッシングを受けていた時期でしたから、この勘九郎の台詞に観衆はヤンヤの拍手喝采でした。(鈴木宗男議員サイドから抗議がなかったのかどうか心配になりました。)

このような台詞を吐けるのも歌舞伎を興行する純然たる民間会社の松竹株式会社が国から補助金を貰っていないからではないかと私は考えています。(その点、日本相撲協会は財団法人のため文部科学省の管轄なのでどうも国に対して気兼ねが目立つような気が・・・・)

“さよなら公演”が長かろうと、“瓦時計”を売り出そうと、最後の公演のチケット代がボッタクリに近かろうとも、自主独立の興行を続ける為には仕方のないことなのだとナットク?しながら、平成22年4月30日の歌舞伎座閉場式の日を迎えました。

この閉場式も12時からと夕方4時からの二部制で、歌舞伎座ではお客さんからしっかりと7,000円の入場料を徴収するのでした。その根性に脱帽!
そしてこの閉場式の当日券を買うためになんと4日前から歌舞伎座の前に並んだ熱心なファンがいたのだとか。こちらの根性にも脱帽!!